【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
介護保険サービスの運営基準が2024年度に改正され、介護保険施設には協力医療機関を指定する義務が課せられた。これによって介護保険施設は、在宅療養支援病院や在宅療養支援診療所、200床未満の地域包括ケア病棟を持つ医療機関、在宅療養後方支援病院などの在宅医療を支援する地域の医療機関(以下、在宅療養支援病院等)と、入所者の急変時対応などの要件を満たす協定を交わす必要が生じる。(※3年間の経過措置あり)
在宅療養支援病院等とは、その名の通り入院治療を中心とするのではなく、患者をできるだけ早く退院させ在宅で療養することを支援する医療機関だ。基本的には入院は7日間、最長でも14日間とされている。もちろん、そのような短期間で病気が完全に治るとは限らない。むしろ完治しない場合が多いだろう。だがそれも想定済みで、今後の医療機関は病気を完治させるまで患者を入院させるのではなく、急性期対応を終えた患者をできるだけ早期に在宅復帰させて、暮らしの場で療養を支援する機能を併せ持つことが求められている。
介護保険施設もその流れの中で、入所者がいったん入院しても、急性期治療が終わった後は、必ず施設に戻って施設内で完治までの治療と療養を行うことが求められている。そのため、指定が義務化される協力医療機関として満たすべき要件の1つに以下のものがある。
「入所者が協力医療機関等に入院した後に、病状が軽快し、退院が可能となった場合においては、速やかに再入所させることができるように努めることとする」
努力義務でしかないとはいっても、この要件は指定協力医療機関との間での協定内容ともいえるわけだから無視するわけにはいかない。そうなると、老健施設の対応が今までと大きく変わってくる。老健施設は入院の際に外泊時費用が算定できず、入院=退所という扱いであった。そのため、入院で空きベッドが生じた場合、できるだけ早く他の人を入所させることが当然のように行われており、いったん入院退所した利用者については、治療が短期間で終わって退院できるケースでも、再入所に当たっては最初の入所と同じ手続きを踏む必要があり、場合によってはかなり長期の待機を余儀なくされることもあった。しかし今後は、いったん退所したのだから即再入所はできないという対応はできなくなる。老健の責任として、入院した人が短期間で施設に再入所できるようにベッドを空けて待つことも必要になる。
■特養の「3カ月ルール」形骸化か
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